
琵琶牧々
びわぼくぼく
別名: 琵琶ぼくぼく
古い琵琶が変化した付喪神。夜中に独りでに音を奏で、奏者の霊や音楽への念が宿ったと伝えられる。
- 時代
- 江戸
- 地域
- 全国
- 分類
- 付喪神
付喪神の行列画図百鬼夜行
概要
琵琶牧々(びわぼくぼく)は、古い琵琶が長年の使用を経て変化した付喪神です。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に登場し、百鬼夜行の行列に加わる楽器系付喪神の代表格として知られています。名前の「牧々(ぼくぼく)」は、琵琶の音色を表す擬音語とも、木(もく)の音の変形とも解釈されています。
姿と特徴
石燕の描く琵琶牧々は、琵琶の胴体から手足が生え、首と目が現れた姿で描かれています。琵琶師(盲目の琵琶奏者)が長年抱えていた楽器に、奏者の魂や音楽への念が宿ったという解釈が一般的です。夜中に誰も触れていないのに琵琶の音が響く、という怪異話とも結びついています。
琵琶と日本の精神文化
琵琶は中国・インドから伝来した弦楽器で、日本では平安時代以降に広く普及しました。特に「琵琶法師」と呼ばれる盲目の僧侶・旅芸人たちは、琵琶を弾きながら『平家物語』などの語り物を伝えました。琵琶は単なる楽器ではなく、鎮魂・供養の道具でもあり、霊的な力を持つとされていました。そのため、長年使われた琵琶が霊を宿すというのは、日本の精神文化において自然な発想です。
音楽と付喪神
楽器系の付喪神は、他の器物妖怪と異なり「音」という無形の要素と結びついています。琵琶牧々が夜中に奏でる音楽は、かつての奏者の記憶や、音楽に込められた感情の残響とも解釈できます。芸術・音楽への深い執着や愛着が付喪神を生み出すという発想は、人間の創造活動と霊的世界の交差点を示しています。現代の作品においても、呪われた楽器・独りでに鳴る楽器というモチーフは繰り返し登場します。
出典
- 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 (1776)


