
二口女
ふたくちおんな
別名: ふたくち女
背中や頭部に第二の口を持つ女の妖怪。隠れて食べ物を貪り、髪が蛇のように動いて口へ食物を運ぶ。
- 時代
- 江戸
- 地域
- 全国
- 分類
- 獣妖
概要
二口女(ふたくちおんな)は、背中や後頭部に人間と同じ口を持つ女性の姿をした妖怪です。表向きは普通の女性として生活しながら、夫や家族が気づかない間に第二の口が食べ物を要求し、髪の毛が蛇のように動いて口に食物を運び込むとされます。江戸時代に鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれたことで広く知られるようになりました。
姿と特徴
外見は普通の女性と変わりませんが、頭部の後ろ側あるいは後頭部に、もう一つの口が存在します。この第二の口は時に歯を剥き出しにして食物を要求し、長く伸びた髪の毛が意思を持つかのように動いて食べ物を口へ運ぶとされます。石燕の絵では、後頭部の口が大きく開いた女性の姿が描かれており、その表情は苦悶と欲望が入り混じった印象を与えます。
伝承と起源
最も広く語られる伝承のひとつに、継子(ままこ)に食事をろくに与えなかった継母が変化したという話があります。継母は表向き質素に食べていましたが、実際には食べ物を独り占めにして隠れて貪り食いをしていたため、その罰として背中に口が生えたと言われます。あるいは、食に強い欲を持つ女性が変化したとも伝えられ、貪欲や隠蔽への戒めとして語り継がれてきました。
民俗的背景
二口女の伝承は、日本各地に散在しており、「食の戒め」を体現した妖怪として機能してきました。食べ物を粗末にしたり、他者に分け与えずに独占したりすることへの忌避感が、こうした怪異譚を生んだと考えられます。また、女性の口を「二重性の象徴」として捉え、表と裏、見せる顔と隠れた欲望を体現する存在として解釈する研究者もいます。
文化的影響
近代以降、二口女はホラー作品や怪談文学に頻繁に登場し、日本の怪異文化の代表的なイメージのひとつとなっています。映画やマンガでは「背中の口が叫ぶ」「髪が独自に動く」といった視覚的インパクトが強調され、グロテスクかつ妖艶な妖怪として描かれることが多いです。
出典
- 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 (1776)
- 『和漢三才図会』 寺島良安 (1713)


