野守
のもり
別名: 野の守
鳥山石燕の画図百鬼夜行に登場する、鏡を持った老人の妖怪。野原を守る翁が変化したとされる。
- 時代
- 江戸
- 地域
- 全国
- 分類
- 山妖
概要
野守(のもり)は、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』(1776年)に描かれた妖怪で、野原や草原を守る老人(翁)が変化した存在とされます。石燕の絵では、大きな鏡を抱えた老人の姿で描かれており、鏡に映る姿が不気味な表情を見せています。
石燕の描写
石燕は野守について「野守は野原を守る翁が老いて妖となりたるもの」と注釈に記しています。鏡を持つ姿は、謡曲(能楽)の「野守」に由来するとも言われます。謡曲「野守」では、野の番人の老翁が鏡を持ち、その鏡に地獄が映るという内容があり、石燕はこれを妖怪として再解釈しました。
謡曲「野守」との関連
謡曲(能楽)の「野守」は、旅の僧侶が野守(野の番人)の翁と出会い、翁が大きな鏡を見せて地獄の様子を映し出すという物語です。最終的に翁は鬼神に変化して去っていくという筋書きで、野の守護者が異界との接点を持つ存在として描かれています。石燕はこの謡曲の世界観を借用しながら、野守を百鬼夜行の一員として描きました。
野守の性質
野守は基本的に野原や田畑の守護神的な性格を持ちます。善悪の二面性を持ち、野を大切にする者には恵みをもたらし、乱す者には祟りをなすと伝えられます。農業と深く結びついた日本の土地信仰を体現した存在と言えます。
また、老人が変化したという設定は、長年その土地に留まり守り続けてきた存在が、年老いるにつれて人間とは異なる存在へと変容していくという日本的な変化(へんげ)の観念を示しています。
文化的意義
野守という妖怪は、日本人の土地に対する信仰と、老齢・変化に対する観念が複合した存在です。野を守る翁という本来は親しみやすい存在が、時間の経過とともに妖怪化するという発想は、人間と自然・霊的存在の境界の曖昧さを示しています。
出典
- 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 (1776)


