樹木子
じゅぼっこ
別名: 樹木こ
戦場の血を吸い続けた木が妖怪化したもの。近づく者を枝で捕まえて血を吸い、骸骨や白骨が枝にかかっているとされる。
- 時代
- 室町
- 地域
- 全国
- 分類
- 山妖、幽冥
概要
樹木子(じゅぼっこ)は、かつて大きな戦が行われた場所に生える木が、流れ落ちた夥しい血液を長年吸い続けることで妖怪化したものです。室町時代から伝わるとされるこの妖怪は、見た目には普通の木と区別がつかず、近づいた旅人や通行者を枝で捕まえ、その血を吸うとされています。枝には過去の犠牲者の骸骨や白骨が引っかかっていることもあるとも伝えられます。
姿と特徴
樹木子は見た目には普通の木と変わりありません。昼間は静かで、木を見ただけでは妖怪とわかりません。しかし夜になると、または人が近づくと、枝が蛇のように動き出し、人を捕縛します。捕まった者は枝に締め付けられ、生き血を吸われるとされています。古い戦場跡の木には樹木子がなっている可能性があるとして、古来より警戒されていました。
戦場と穢れ
樹木子が戦場跡に生まれるという設定は、日本の「穢れ(けがれ)」の概念と深く関係しています。戦場は大量の死と血液によって極度に穢れた場所であり、そこに生える植物はその穢れを吸収して変質するという発想です。特に室町時代は戦国時代に向かう激動の時代であり、全国各地に無数の戦場跡が残されました。そうした場所への恐怖と、死者への鎮魂の必要性が、樹木子のような妖怪を生み出したと考えられます。
吸血する植物のモチーフ
人間の血を吸う植物・生き物を捕食する植物というモチーフは世界各地の神話・伝説に見られます。日本の樹木子はその東アジア版ともいえる存在で、戦争の記憶と植物の生命力が結びついた独特の妖怪です。現代のフィクション(ホラー・ファンタジー)においても「血を吸う木」「人食い植物」のモチーフは頻繁に登場し、樹木子の伝承と共通するイメージを持っています。
出典
- 『妖怪談義』 柳田國男 (1956)

