小豆婆
あずきばばあ
別名: 小豆ばばあ、豆婆
山の川辺でショキショキと小豆を研ぐ音を立てる老婆の妖怪。小豆洗いの女性版で、人を食べるとも言われる。
- 時代
- 不詳
- 地域
- 全国
- 分類
- 山妖、水妖
概要
小豆婆(あずきばばあ)は、山間の川辺や水場で「ショキショキ」と小豆を研ぐ音を立てる老婆の妖怪です。小豆洗い(あずきあらい)と類似した怪異ですが、姿が老婆として明確に描かれること、そして単なる驚かせ役にとどまらず人を食べる危険な存在という点で区別されます。
小豆洗いとの関係
小豆婆は小豆洗い(あずきあらい)の変形とも、女性形とも言われます。小豆洗いが中性的・無形的な「音の妖怪」であるのに対し、小豆婆はより具体的な姿——しわだらけの老婆——を持ち、より積極的に人に害をなす存在として語られます。
「♪小豆とごうか、人食おうか♪」という呪文のような歌を歌いながら小豆を研いでいるという点は両者に共通しており、この歌そのものが一つの伝承類型をなしています。
伝承の地域差
小豆婆の伝承は東北地方を中心に多く残っています。老婆が川辺で小豆を研ぐ姿は具体的なイメージを持っており、夜の山道や川辺で一人にならないようにという警告と結びついています。
一部の伝承では、小豆婆に近づきすぎると川に引き込まれたり、老婆に掴みかかられて食べられたりするとされており、小豆洗いよりも危険度が高い妖怪として描かれます。
老婆の怪異
日本の妖怪文化において、老婆(婆)の怪異は特別なカテゴリを形成しています。山姥・鬼婆・飢鬼ばばあなど、老婆の姿をした妖怪は多く、その多くが食人的な性質を持ちます。小豆婆もこの系譜に属しており、山や水辺という境界的な場所に棲む、老いた女性の怪異という類型を示しています。
老婆の怪異が多い背景には、老いた女性が当時の社会において社会的に周縁化されていたこと、また山や水辺という場所に独り住まいする老女への恐怖と畏敬が混在していたことなどが指摘されています。
民俗学的解釈
小豆婆は「山や川で一人で作業する老女」という、実際に存在した人間のイメージが妖怪化したものとも考えられます。山間の集落では、様々な理由で川辺に一人でいる老女がいたかもしれず、夜にその姿を見た者の恐怖体験が怪談として語り継がれた可能性もあります。
出典
- 『妖怪談義』 柳田國男 (1956)


