砂かけ婆
すなかけばばあ
別名: 砂かけ婆さん、すなかけばば
近畿地方の山道に棲む婆さん妖怪。樹上から砂や小石を降らせて旅人を驚かせるが、害は少ないとされる。
- 時代
- 不詳
- 地域
- 近畿
- 分類
- 山妖
概要
砂かけ婆(すなかけばばあ)は、近畿地方——主に奈良県・兵庫県の山間部——に伝わる妖怪です。夜の山道を歩く旅人の頭上から、突然砂や土、小石を降らせてくるとされます。姿はほとんど見えず、木の上から砂をかけてくるとされていますが、直接攻撃することはなく、もっぱら驚かせることを目的とした妖怪です。
姿と特徴
砂かけ婆の姿については諸説ありますが、一般的には白髪の老婆の姿で描かれます。木の上や茂みに潜み、夜に一人で歩く旅人を見つけると、上から砂や小石を撒いて驚かせます。水木しげるの描写では、白髪と緑の肌を持つ老婆として描かれており、この図版が広く知られています。実害は砂をかけられる驚きのみで、命を奪ったり重傷を負わせたりはしないとされます。
伝承と地域性
砂かけ婆の伝承は奈良県や兵庫県の山間部に特に多く残っています。暗い山道を一人歩いていると突然砂や土が降ってきて、周囲を探しても誰もいない——そういった不思議な体験の原因として語られてきました。砂かけ婆だけでなく、「天狗の仕業」として説明されることもあり、人間の目には見えない何かが山中に棲んでいるという信仰の表れでもあります。
水木しげるとの関連
砂かけ婆は水木しげるの妖怪漫画に登場したことで全国的に知られるようになりました。子泣き爺やぬりかべとともに鳥取県境港市(水木の出身地)の「水木しげるロード」にも銅像が設置されており、今では水木妖怪の代表格のひとつとなっています。
「かけ」の民俗
日本の民俗には、何かを「かける」行為に呪術的な意味を持たせる伝承が多くあります。砂をかけることは、相手の注意を散らしたり、霊的な結界を乱したりする意味があると考えられていたようです。砂かけ婆がなぜ砂をかけるのかについての明確な説明は伝承に残っていませんが、夜の山道での不気味な経験を「妖怪のいたずら」として説明する日本人の自然観が反映されています。
出典
- 『妖怪談義』 柳田國男 (1956)
- 『妖怪大全』 水木しげる (2004)

