子泣き爺
こなきじじい
別名: 子泣き爺さん、こなきじじ
四国の山中に棲む妖怪。赤子のように泣いて旅人を誘い、抱き上げると石のように重くなって動けなくする。
- 時代
- 不詳
- 地域
- 四国
- 分類
- 山妖、獣妖
概要
子泣き爺(こなきじじい)は、四国地方——特に徳島県の山間部——に伝わる妖怪です。赤子のような泣き声を出して旅人を誘い、哀れに思って抱き上げると、みるみるうちに石のように重くなって持ち上げられなくなるとされます。水木しげるの妖怪漫画を通じて全国的に広く知られるようになりました。
姿と特徴
子泣き爺の外見は、非常に小さい老人の姿です。赤ちゃんのように顔が丸く、皺だらけで白髪の爺さんが赤子のように蹲っています。泣き声は本物の赤ちゃんと聞き分けがつかないほど似ており、山道で聞けば赤ちゃんが捨てられていると勘違いしてしまいます。抱き上げた瞬間から徐々に、あるいは急激に重くなっていき、最終的には何百キロもある岩石のように重くなって動けなくなると言われます。
伝承と被害
子泣き爺に遭遇した旅人は、重さで動けなくなり、山中で命を落とすこともあるとされます。また、抱いた者が衰弱して死ぬという話も伝わります。対処法としては、無視して立ち去ることが最も確実とされますが、泣き声があまりに子供に似ているため、無視することは心理的に非常に難しいとされています。徳島県では「ことなき爺」「子泣き老人」などの名でも呼ばれています。
民俗学的背景
柳田國男は子泣き爺を「山の怪」として記録し、四国の山間部に根付いた独自の妖怪伝承として重視しました。子捨て(間引き)の慣習への罪悪感や、山中での遭難への恐怖心が具象化した存在として解釈されることもあります。また、赤ちゃんの泣き声という本能的に無視できない刺激を使う点は、人間の保護本能につけ込む妖怪の巧妙さを示しています。
水木しげると子泣き爺
水木しげるは子供の頃に地元の人から子泣き爺の話を聞いており、自身の妖怪漫画に登場させたことで全国的に広まりました。水木版の子泣き爺は徳島県の伝承を基にしており、同作品に登場するぬりかべや砂かけ婆などとともに「水木妖怪」の代表格として知られています。現在でも徳島県では子泣き爺は地域のシンボル的な存在です。
出典
- 『妖怪談義』 柳田國男 (1956)
- 『妖怪大全』 水木しげる (2004)

