
釣瓶落とし
つるべおとし
別名: つるべ落とし
古木の上から急に大きな顔が落ちてくる妖怪。近畿・中部地方の榎などの大木に棲むとされる。
- 時代
- 江戸
- 地域
- 近畿、中部
- 分類
- 山妖、獣妖
概要
釣瓶落とし(つるべおとし)は、古い大木の上に棲み、木の下を通る人に向かって突然大きな顔や物体を落としてくる妖怪です。名前は、井戸の釣瓶(水を汲むための桶)が素早く落ちる様子に由来しています。特に近畿・中部地方の榎(えのき)の古木に棲むとされることが多く、夕暮れ時から夜にかけて出没します。
伝承の詳細
釣瓶落としの伝承は地域によって様々ですが、共通するのは「高い木の上から突然何かが落ちてくる」という要素です。落ちてくるものは、巨大な顔だけという説、生首という説、あるいは全身が落ちてくるという説など諸説あります。
三重県や奈良県周辺には特に伝承が豊富で、地名にも残っているほどです。「古い榎の下を夜に通るな」という警句とともに語られることが多く、特定の古木との結びつきが強い妖怪です。
特徴と姿
鳥山石燕の『画図百鬼夜行』には釣瓶落としが描かれており、木の上から降りてくる怪物の姿が示されています。顔が非常に大きく、手足は長く、木の枝の間からぶら下がるようにして落ちてくるイメージが定着しています。
また「釣瓶落とし」という名は「日が釣瓶落としのように落ちる」(秋の日が早く落ちる様子を比喩したことわざ)とも結びついており、秋の夕暮れ時という怪異が起きやすい時間帯への言及も含まれているとも言われます。
民俗学的解釈
大きな古木には古くから神や霊が宿るという信仰があり、その霊的な力が怪異として現れたものが釣瓶落としだという解釈があります。また、夜の山道や森の古木の下を通ることへの警戒心を育てるための伝承として機能したとも考えられます。高い木から物が落ちてくるという危険は実際に存在するため、妖怪の形を借りた安全警告の側面もあったでしょう。
出典
- 『画図百鬼夜行』 鳥山石燕 (1776)

